予備校地理講師兼進学塾講師・山岡信幸のブログです。
先日の記事 に出てきたアスワンハイダムについてまとめておく。

アスワンハイダム のコピー

(1) ナイル川の氾濫防止、灌漑用水の確保、電源開発のために計画され、
 1960から1970年にかけて建設された全長3600mのロックフィルダム。
  アスワンダム(1901年完成)の能力不足を補う必要があった。
(2) 建設計画を進めた当時のナセル大統領は、
 資金を確保するためにスエズ運河国有化・通航料徴収を図った。
  しかし、1956年の国有化宣言は英・仏やイスラエルの反発を招き、
 第二次中東戦争(スエズ動乱)の勃発へとつながった。
 ナセルは軍事的には敗れたものの、アラブの盟主として強い政治力を得た。
  ナセルは、冷戦体制を背景に旧ソ連の援助を得てダムを完成させた。
(3) ダム建設によって、ナイル川の氾濫が抑制されるとともに、
 農業用水が確保されて砂漠の緑化、灌漑農地の拡大が進み、
 エジプトは綿花・小麦などの増産をなしとげた。
 また、水力発電が行われてエジプトの電力供給量は倍増した。
(4) 一方、排水不十分な灌漑による塩害(土壌の塩性化)、下流域への土壌供給減少
 河口付近の土壌侵食、風土病の蔓延※、沿岸漁業の衰退などの問題も発生した。
  「エジプトはナイルの賜物」(歴史家ヘロドトスがヘカタイオスから引用した句)とは、
 ナイル川の定期的な氾濫が下流域に肥沃な土壌を供給することを意味する※※。
 ダムは水だけでなく土壌もせき止めてしまったのである。
(5) ダムが建設されると、上流側に巨大なダム湖(ナセル湖)が形成された。 
  ダム湖に沈む古代エジプトの遺跡(アブ=シンベル神殿)を守るため、
 ユネスコ(国連教育科学文化機関)が解体し、湖畔に移設。
 この動きは「世界遺産」創設のきっかけとなった。

※ 河川流量の減少により、寄生虫の宿主となる巻貝が海に流されずに流域に留まり、
 風土病(住血吸虫症)が蔓延した。
※※ ナイル川の上流には2つの流れがある。
 赤道上のヴィクトリア湖方面から流れてくる白ナイルと、エチオピア高原タナ湖から流れてくる青ナイル
 これらはスーダンの首都ハルツームのあたりで合流する。
  白も青も上流には雨季と乾季が明瞭なサバナ気候区(Aw)を持ち、
 雨季には増水する(特に青ナイルの流量変化は大きい)。
 増水したナイルは、中流のステップ気候区(BS)周辺で肥沃な黒土を侵食して下流に運搬する。
  ステップ気候区は雨が少なく、枯れ草の腐植が流亡しないので土壌が肥沃になるのである。
 こうして黒土をたっぷり含んだナイル川は、下流のナイルデルタで氾濫してその土壌を肥沃にしてきた。
外来河川ナイル のコピー


以下 『地理B一問一答【完全版】』 より

Q 巨大な多目的ダムとしては、アメリカの【     】総合開発計画によるフーヴァーダム、中国長江の【     】ダム、エジプトの【     】ダム、ガーナの【     】ダムなどが有名である。(福岡大 改題)
A コロラド川、サンシャ、アスワンハイ、アコソンボ

Q 【正誤判定】ナイル川河口部ではアスワンハイダムの建設により肥沃な農耕地が拡大した。(関西学院大)
A ×(河口部では土砂供給量が減って海岸浸食が進んだ)

Q 【正誤判定】アスワンハイダムの建設により、農地への肥沃な土壌の供給がなくなり、化学肥料を耕地にまく必要ができて、農民の負担が増した。(松山大)
A ○(小麦・綿花などの生産を拡大したが、巨大ダムは水だけでなく土砂もせき止める)

Q 【正誤判定】アスワンハイダムの建設により、不適切な灌漑で農地に塩類が集積して耕地が荒れるなどの被害が生じた。(松山大)
A ○(乾燥地域に過剰な灌漑を行うと、土壌中の塩類が地表に集積する)

Q 【正誤判定】アスワンハイダムの建設により、住民の間にデング熱が蔓延するようになった。(松山大)
A ×(デング熱➡住血吸虫症)

Q 【正誤判定】アスワンハイダムの建設により、ナイル川から地中海に流れ込む栄養分が以前の3分の1に減り、その影響でプランクトンが減少し、漁業に打撃を与えた。(松山大)
A ○(土砂とともに下流に供給されていた栄養分も減少した)
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